4/22 物語 ボクは原発君!最終章 ボクは鬼になる

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    いよいよ最終章になります。

     月6日の第1章『僕は生れた』
    3月7日の第二章『僕のウンチ』,
    3月15日の第3章『そして、その日が来た』
    4月20日の第四章『バクハツしたボク』
    の続きです。

    物語 ボクは原発君!最終章 ボクは鬼になる


     あれからどれくらいの年月がたったのかボクにはわからない。死んでるのか、生きてるのかもわからない。でも、ボクはコンクリートで固められ、石のかんおけとして、ここに建っている。
     ピー君が死んだ後も、恐ろしいことばかりだった。ボクの中の燃料を冷やすために、どんどん入れられた水は、恐ろしい水になって、僕の体のあちこちから出て、どんどんたまっていった。そして、海にもいっぱい流された。ボクは、その恐ろしいものが「放射能」で、「放射能」を出すものを「放射性物質」ということは知っていた。

     大空に飛び散ったボクからでた「放射性物質」は、風に乗り、世界中の空をめぐり、雨などと一緒に地表に降り積もった。「放射能」を避けるために、僕から逃げていった人々も次々と逃げる場所を変えなければならなかったし、逃げなくてはいけない人もどんどん増えていった。逃げなくていいといわれた人達も、その怖さは同じだった。食べるものを作る人も、買う人も何を信じていいかわからなくて苦しんだ。「放射能」は体の細胞を傷つける。口の中から、体に入ると、時限爆弾のように、いつどこで病気を引き起こすかわからない。僕がびっくりしたのは、あんなに出しちゃいけないといわれていたのに、放射能は「大丈夫」という人がいたことだった。「1000人に何人の割合でガンになったりするだけだから大丈夫」っていうんだ。ボクにはその考え方はわからない。1人でも100人でもそれで苦しむなら同じだ。ボクがいることで、そして、ボクが生み出す「放射能」で、こんなに人間同士が信じあえなくなり、苦しい思いをすることが耐えられない。

     あの爆発の後「津波のせいだ。津波が悪いんで、ボクが悪いわけじゃない」ってボクのことをかばってくれる人がいたけど、ボクは思い出してた。ボクができたばかりの頃、たまたま海岸にやってきた海亀君が、「ここはね、何百年前にも、ものすごい津波が来たんだよ。これは結構有名な話さ。こんなとこにいて大丈夫かい」って言ってたんだ。その時「そんな昔なら自分には関係ないじゃん」って思った。大きな地震も、津波も実際に起きたことでも、自分の都合で『起きない』ことにできるんだ。『必要だから安全』って平気で言えちゃうんだ。人間にとって、都合の悪いことに、目や、耳をふさぐこと、考えないようにすることって、びっくりするほど簡単みたいなんだ。

     

    そして、「放射能」を作らなくても電気を作れる仲間がいっぱいいることもあの後知った。そのみんなが頑張って、僕の代わりに電気を作ってくれた。『僕達が頑張らなければ電気が作れない』ということ自体が、誰かの都合だったんだ。

     ボクは、もう誰も、何も信じられない。ボクはもう必要ないどころか、みんなに迷惑をかけることしかできないんだ。ボクはピー君のことを思い出す。なんの罪もないのに、僕のせいで死んでいったピー君を忘れない。地獄のような苦しみを抱えながら死んでいった牛君や犬君を忘れない。たまたま吹いた風の向きで、今でも不安を抱え、苦しい思いをして生活している人達を忘れない。ボクに唯一できることは、ボクのために苦しむ人達をこれ以上生み出さないことなんだ。そう思った時から、ボクは鬼になることにした。そのためにもボクはずーっと生き続ける。友達をつくるなんてもってのほかだ。どんな動物も、人間も、虫もボクの近くに来れないように、ボクは世界一怖い鬼になることに決めたんだ。誰ともしゃべらない。もう、悲しくなんかない。淋しくなんかない。怖くなんかもない。僕は世界で一番怖い鬼になったのだから。それが、死ぬことのできない僕にできる唯一のことなんだ。

     あれからどれくらいの年月がたったのかボクにはわからない。死んでるのか、生きてるのかもわからない。でも、ボクはコンクリートで固められ、石のかんおけとして、ここに建っている。
     そして、僕は目をつぶって、祈ってるんだ。子供達が何の心配もなく、裸足で野原を駆け回り。おじさんやおばさんが、何の心配もなく おいしいものをつくり、みんなで笑いながらそれを食べる。みんなが海に行ったり、山に行ったり、動物や植物、虫たちと一緒に、誇り高く生きている姿が、この日本に広がっていることを。

       終わり


    コメント
    つづきを待っていました。悲しいお話になっていますが、仕方がありませんね。石棺の中で鬼になっている原発君。でも、現実には石棺化もできず、再稼働を目指す政府に置き去りにされる福島。現実の方がはるかに悲しい・・・。また、紹介させていただきます。
    • cangael
    • 2013/04/22 11:33 AM
    娘が茶の間に一緒に居なかったら号泣するところでした。
    かなーしくーてーかなしくてーとてーもやーりーきれーないー(ToT)
    • にあ
    • 2013/04/22 7:00 PM
    読ませていただきました。読むとやっぱり考える…悲しいことですよね。 伝えていかなくては…と思います。
    世の中忙しすぎて、風みたいに色々なことが過ぎ去ってく…
    立ち止まって考えられる人間が破壊の道へ突き進んでいるかのような…
    いらないものを無くす手放す勇気…原発も断捨理していきたいですね。
    • ゆかえま、かなめ母
    • 2013/04/24 3:48 PM
    失礼しました…断捨離ですね(笑)変換間違えしました。(^^;
    • ゆかえま かなめ母
    • 2013/04/24 3:56 PM
    みなさんへ
    『ボクは原発君』を読んでいただきありがとうございます。こんな物語を書かなくちゃいけない世の中なんて、やっぱダメです。
    • おとじろう
    • 2013/04/24 8:09 PM
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