ぴっぱら通信341から転載 「いや、まだ怖いわ」
ぴっぱら通信341から転載
「いや、まだ怖いわ」
じュんき記
「屋根、のぼってもいいかい?」耳打ちするりかこさん。「いや、まだ怖いわ」僕はそっけなく即答した。分厚く乗ったぴっぱら小屋の雪。時々、降ろさないといけない。こどもたちは雪下ろしを一緒にやるのが大好きだ。ただ、濡れた小屋の屋根はとてつもなく滑る。大人でも容易には歩けない。軒下の積雪も低い今時期に、こどもがのぼるのはまだちょっと怖いと、僕は思った。でも、りかこさん曰く、Nは雪下ろしがやりたくてしょうがないらしい。除雪のプロとしての血が騒ぐのだろうか。そんなNの様子もつゆ知らず、僕はりかこさんにそっけなく「いや、まだ怖いわ」と一言いっただけだった。それで話は終わった。と、思っていた。...
そのすぐ後だ。裏に回ると、小屋の屋根につながるツリーハウスに、Nをはじめたくさんのこどもたちがよじのぼり、今にも雪下ろしが始まろうとしていた。その真ん中には、りかこさんの姿が見えた。僕の視点からすれば、屋根のぼりは怖い。でも、りかこさんの視点は、きっと違ったのだろう。「なにかうまく工夫をすればこどもでもやれる」という判断をしたのであれば、僕は安心して見てられると思った。そんなことを思いながら眺めていると、ふいに、りかこさんが一言いった。「じュんきー、変わってくれないかい?」 ……ん、僕がやるんですか?! 一瞬思考が止まった。そして重要なことを思い出した。りかこさんは高い所がとんでもなく苦手なんだ。とはいえ、こどもたちはもうやる気まんまんだ。とりあえず僕も急いでツリーハウスの上に登った。
「えーと、どうしようか」。面白いことに、屋根の上から見渡すと、また違った見え方がした。はじっこの一部屋の屋根はそんなに高くないなあ。のぼっても大丈夫そうだ!上で立ちさえしなければ安全にやれると思い、「みんな、一個だけ大事なお願いがある!」と言うと、間髪入れずにKやYが、「ふざけない!押さない !! けんかしない !!!」と、みっつもよっつもお願いを先読みして言い放つ。みんなちゃんとわかっている。この子たち大丈夫だ、と、いろんなことを思い直した。
そうして、屋根の雪下ろしは楽しい朝のひとときとなり、みんな大満足のうちに終わった。いやあ、面白かった。いい汗かいた。最初、「いや、まだ怖いわ」で終わろうとしていた話が、とりあえずツリーハウスに登ってみると、まったく違う見え方が生まれ、その先にしかない“物語”へとつながっていった。こどもたちの“やりたい”っていう声に、大人の目線からすれば断る理由はいくらでも出てくるんだ。でも、そこですぐに線を引いてしまわずに、もう一足、こどもたちの世界に歩み寄ってみる。今回、そのことの大切さを教えてくれたのは、高いところがとんでもなく苦手なりかこさんだった。
「きょうはたのしかった」
Mちゃん母記
昨日は仕事に行く前に少しだけ、遊びたかった気持ちを叶えにぴっぱらへ。付き合ってくれたMと後から来てくれたNちゃん。遊び慣れてる子ども達についていくように一緒に遊ぶ。パレットヒルズにも行ってみる。久しぶりに来た。冬の景色って幻想的でなんとなく寂しさが漂う。あーそれが思うようには写真に納まらない。わっせわっせと少し雪をこいで登ったところで仕事に行く時間に。わかってはいたけれど、すっかり意気消沈の我が娘。私がいるとどうしても甘えたくてグズグズになる。その気持ちをズバリ言い当て「はやくしごとにいきなさーい」とKちゃん。その時その瞬間の気持ちに向き合う難しさ。その後どん底まで落ちたけど、自分で切り替えて遊びだしたらしい。その話を聞いて、うんそれでいいんだって思った。自分がどんな気持ちでどうその時間を過ごすのかを自分で決められたんだね。それができたからかな。「きょうはたのしかった」と一日の終わりに言っていた
- 2016.12.14 Wednesday
- もりのよちえん ぴっぱら
- 19:32
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